遠的は的前の規矩で行う事:本多利実師
明治42年本多利実師著「弓術講義録」大日本弓術会刊
(大正12年本多利実師著「弓道講義録」大日本弓道会刊(国会図書館蔵))
遠的は15間的前と同じ射法です。繰り矢、指し矢は別に射法射技があります
遠的は的前の規矩で行う事:本多利実師
明治42年本多利実師著「弓術講義録」大日本弓術会刊
(大正12年本多利実師著「弓道講義録」大日本弓道会刊(国会図書館蔵))
遠的は15間的前と同じ射法です。繰り矢、指し矢は別に射法射技があります
「弓道講義録」に「遠的概論」が載っております。全日本弓道連盟編教本一巻には「遠的」が掲載されています。秋葉山で遠的会を行うにあたり一部の人から審査には遠的が無く、必要が無いとする意見もありましたので、30間程度(60m程度)の遠的に関する射法射技について記述します。
本多利実師著「弓道講義録」「弓術講義録」によれば
遠的:60m程度(80~90m程度)の遠的は的前射法に属する。
遠的の距離は定まってい無い。
遠的の規矩:縦軸・横軸の規矩は真っ直・真っ平の15間の規矩と同じ
修得すべき射法射術:「的前」、「繰り矢前」、「指し矢」の三つ射法射術を習う事。
随って繰り矢、指し矢も射法射術の本は一つである「骨法の理」に適って行う事。
遠矢の胴造や射方等、指し矢の射法等の的前と相違が「弓術講義録」に記載されています。
遠的をもって繰り矢、指し矢の射法を習得したことになりません。射法訓を記述した吉見順正師の始祖竹林坊如成師は『「中り」と「矢早」は射の本地ですが、加えて、『遊興とは「射形の花形」、真実とは矢業「繰り矢・指し矢」を忘れざる事」と述べ、本多利実師も「離れる前に中り外れの理を知る」のが「骨法の理」で『形麗しく引く「花形」は、「中り」「矢早」「遠矢」「指し矢」の修行を積んだ暁に為すべき事』、「弓一通り稽古して卒業した方でないと理解されない」と述べています。それ故、「遠的を骨法の理に適って的前射法で為す事」を念頭に於て、遠的を実践する事と思います。先ずは、指導者が実践されて示すべき事と云えます。
いかに本多利実師の遠的論を抜粋し、「射の真実・矢業」について問います。
明治42年本多利実師著「弓術講義録」大日本弓術会刊
大正12年本多利実師著「弓道講義録」大日本弓道会刊(国会図書館蔵)
第四編 遠的概論
第一章 緒論 第二章 遠的の間数 第三章 狙い 第四章 遠的の目的
第五章 射形 第一節 足踏 第二節 胴造 第三節 弓構 第四節 打起 第五節 引分 第六節 会 第七節 離
以下、骨法と弓力に係ると思われる記述を抜粋します。
第一章 緒論
『・・・射術は何流派と限りません総て的前、繰り矢前、指し矢前の三つに分れて教えてございます、それを真行草と申しますことは甞て申して置いたことで御座います、・・・』『・・・的前から少々変った先ず其の余興と申す様なものが遠的で御座います、之も先ず的前と申して差支御座いません、・・・真につかず又行という程でもなく先ず真と行との中間位と思えば差支えは御座いますまい』
第二章 遠的の間数 第三章 狙い
第四章 遠的の目的
『・・・元来弓の間数と申しても何間何尺という本来の規定はないので御座います、強いて古法を求めますれば、大凡十五間と三十間との間数は記されて御座います、之が的前の間数としては丁度宜しいので御座います。・・・』『然らば遠的は何の為に致すか、三十三間堂の通し矢は何の為に致しましたかと云うに、何れも皆一つの余興としていたしたことから興ったにすぎません・・・』
第五章 射形
『・・・常の的前の通りにして唯其矢を的のある所まで届かせるという丈けであります、・・・』
第一節 足踏 50間(約90m)以上の時、常よりは少し(一寸ほど)狭く。左親指を少し内にする。
第二節 胴造 15間、30間の縦軸横軸の規矩はでは真直真平で宜しうございます。
50間以上は水平よりは少しく左手を上げていなければなりません
33間(60m)は真っ直真っ平
第三節 弓構 第四節 打起 第五節 引分 第六節 会 第七節 離
繰矢や指し矢等の「矢業」の稽古が出来ない現代は、遠的は正しい射法射技を理解する上で欠かせない射行と思います。特に初めて弓を手にされた方々には機会があればぜひ実践するよう勧めています。竹林派は指し矢で多くの業績を残した流派であり、射法訓はその中で生れ「射法訓」を目指している事は、的前のみならず指し矢、遠矢の「矢業」の真実を理解する事に努めなさいと学べます。教本にも載っている「射法訓」は吉見順正師(竹林坊如成師から三代目 に当たる17世紀中ごろ紀州竹林派祖)の訓示です。吉見順正師は指し矢で偉業を為しました。
「弓の本地が中と矢早」なら「射の真実」を示す「矢業」とは何かを吟味する事が大切です。そこに弓の強弱が関り「骨法の射」の理が顕われて来ると思います。上記「弓道講義録」の抜粋には、本多利実師は遠的論で50間(約90m)以下では左手を上げないと述べる意味は弓の強さと離れの規矩が大きくかかわると愚推します。関連する規矩の在り方を吟味すべきとおもいます。
遠的90mまでは縦横軸の規矩は垂直水平でそれ以上が少し左を上げるのであれば、三十三間堂の軒高5m強の指し矢120m(90+30m)の縦横の軸は、空に向かって射る繰矢は400m以上の縦横軸の規矩はいかに、その事を問いつつ遠的を学ぶべきと思います。
遠的 以上