彫る技
彫る技
次に掲げる「デザインの要求性能」と前記「使われる状態からくる要求性」に従って
彫る柄のデザインが決まり、型紙を彫ります。
彫り込む前の渋紙の準備
渋紙の大きさとレイアウト
①縁場の必要性 縁場とは柄の外側の無地の部分で、「へら」で絵柄の上から糊をやさしく孔を通過させながら余分の糊を掻きとります
柄の端部は柄の境界を越えて糊を掃き出します。その糊が乗る部分を縁場と云います。又縁場大きさは、絵柄を保持し
版の平板性、版の強度、型口の仕上がりに影響します。切り絵と全く異なる所です。
柄と縁場が決まれば、彫り込む渋紙の大きさが定まります。
②絵柄が入る四角形の位置の決定。採寸と四隅の直角性確保
伝統的な方法があります。二枚の渋紙と直線定規と線引き道具とキリで描きます。
四隅がキリで空いた二つの対角線を重ね、上下の渋紙のキリ穴がぴったり一致すれば正長方形は完成します
正確な技術を身につけていないので、職人さんに伺うことを薦めます。これには訓練された技量が必要です。
③渋紙を2~3枚重ねて彫るときの、二枚の渋紙は和紙の紙縒りを通して一体にします。作業中にずれる事はありません。次項に記載
絵柄を渋紙の上に線画として転写する方法には限定がありません。
絵柄と渋紙の間にカーボン紙を挟んで絵柄の上から境界線をなぞり転写する方法
孔版型紙になっていれば墨を刷毛につけて、渋紙の上に既成孔版型紙を置き固定し、上から刷毛で墨をすり込み転写する
コピーした柄をコピー紙のまま渋紙にはがしができる糊で仮付けして、コピー紙の上からコピー紙と一緒に彫り込む
など等があります。
型彫り
1・絵柄の転写
2・上型口の彫込み 上型口の背面に、型口デザインがわかるだけの大きさの「型口合せ用渋紙A」を紙縒りでとりつける。
上型口の四隅の切穴に従って、下にある「型口合わせ用渋紙A」に四隅のキリ穴を掘る
型口あわせの星をキリで彫る
上型口の部分を彫る
紙縒りを外し「型口合わせ用渋紙A」をはずす
3・下型口の彫込み 上型口を彫り込んだ「型口合わせ用渋紙A」の四隅の切穴を、下型口の四隅の切穴に合わせて渋紙に針で止める
上型口を彫り込んだ「型口合わせ用渋紙A」の上から色材や墨を刷毛を使って、渋紙に上型口彫込み絵柄転写する
上型口を彫り込んだ「型口合わせ用渋紙A」をはずし、下型口を、彫込み絵柄と一致するように彫る
4・全体の絵柄を彫る
型彫りと表現性の関係
同じ柄を彫り込んでも仕上がる型紙の絵柄のイメージは異なります
職業として彫る場合と個人の用に用いる型紙とは、柄の品質管理に関し異なります。
職業としての型紙は彫り師の差が出ない様親方が管理するのでしょう。渋紙に移されたデザインの上に「ここ彫るな」と文字が書かれた文字をを柄として彫った、との話です。彫り師が描かれた境界線に忠実であっ、職人さんの腕の良さが思い浮かびます。
良い柄を見ますと自分も彫りたくなります。転写して彫るときに前の型のイメージと異なれば元柄とは全く変わった型紙が生まれます。転写された紅型によく見ますが、一つ紅型にとどまりません。元柄と自分の思いを描くに出来た表現に責任が生じるの型紙だけではありません。
シルクスクリーンにニス紙を用い、之をカッターで孔版を作っていましたが、日本刀と同じ質の「刀」を手にして渋紙を彫り込む時、毛筆で絵を描く如くに彫り込むことを薦められました。それにはまず刀が研げる技能が必要になります。研いで研いで研ぎまくる毎日と指の皮も一緒に研がれるほどに修得ができます。
次に姿勢です。毛筆の運筆には「骨法」があると来ていますので、姿勢を崩さぬように考えました。なぜなら姿勢を崩すと渋紙に対する「刀」の刃の角度と深さが変わり、孔版の質が変わると思いました。特に型口の連続性に大きな影響を及ぼします。また角度のブレは細い線を通す糊の幅に関り合わせて孔版が糊で目詰まりのトラブルにかかわります。併せて、カスレという表現の精度に係ります。
その様に技を身につけたら、渋紙に転写されたデザインを再び活きた映像にとらえて陰陽のイメージの中に生まれた境を「刀」が走るイメージで活きた絵柄を浮き立たたせたいと彫り込んでいます。彫りつつ感動がわかねば、道具としての型紙から生まれる製品は活きないよいわれます。個人の表現で用いる型紙は特にその事に専念し、型口や星の切込みを完璧に為したうえで自在に「刀」を走らせたいといつもねががっております。